結論から言うと——車の下に潜って作業するなら、ウマ(ジャッキスタンド)は必須です。耐荷重に余裕があり、サドルが車に合うものを選べば安全。整備士がおすすめ3つを比較します。
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📖 この記事でわかること
- なぜジャッキだけで車の下に入ってはいけないのか(実際の事故から)
- 現役整備士が選ぶ、失敗しないウマ(ジャッキスタンド)の選び方
- 事故を防ぐ正しい使い方(向き・順番・輪止め・接地確認)
「タイヤ交換やオイル交換を自分でやってみたい。
でも、車の下に入るのが正直こわい」。
そう感じているなら、その感覚は大正解です。
車の下にもぐる前、整備士が必ずやることがあります。
ウマ(ジャッキスタンド)をかけることです。
この記事では、現役の整備士として、ウマの選び方と「事故を防ぐ使い方」を本音でお伝えします。
知っていれば、DIY整備はちゃんと安全にできます。
ウマ(ジャッキスタンド)とは?ジャッキだけが絶対ダメな理由
ジャッキは「上げる道具」、ウマは「支え続ける道具」
フロアジャッキやパンタジャッキは、車を「持ち上げる」ための道具です。
でも、ジャッキは“支え続ける”ようには作られていません。
油圧が抜けたり、わずかに傾いたりすれば、車は一気に落ちます。
そこで、上げた車を下から支え続けるのがウマ(ジャッキスタンド)です。
ジャッキとウマは、セットで初めて安全になります。
これは「知れば防げる」事故です
ジャッキだけで車の下に入って、車体の下敷きになる事故は、残念ながら全国で繰り返し起きています。
報道では、ジャッキアップして点検中の男性が下敷きになって亡くなった例(福島)、整備店の店主がジャッキが外れて亡くなった例(神戸)などが伝えられています。
厚生労働省の労働災害事例にも、整備中の「はさまれ」事故が記録されています。
共通点は「ジャッキだけで支えて、下に入っていた」こと。
裏を返せば、ウマを正しく使えば防げた事故です。
脅すためではなく、正しく使えば安全に作業できると知ってほしいのです。
🔧 整備士の本音
知り合いの話です。
サーキットで下回りをぶつけて、その点検を油圧ジャッキだけで済ませようと、上半身を車の下に入れました。
そのとき油圧が抜けて、肩を骨折。
「ちょっとだけだから」「焦っていたから」という油断が、こういう事故を起こします。
“ちょっとだけ”が一番あぶないんです。
車のウマ おすすめ3選+一緒に揃えたいグッズ 比較表
選ぶ基準は「車の重さに余裕のある耐荷重と、車体に合うサドル形状」。下で紹介するのは、この基準を満たすものだけです。
まず結論から。
DIY初心者なら、BALかアストロのピン式2t+輪止めを選べば、まず間違いありません。
一覧で比べてみてください。
| 商品 | タイプ | 耐荷重 | 特徴 | 詳細 |
|---|---|---|---|---|
| BAL キーパーマン923(本命) | ピン式・3本脚 | 2t(2脚) | 整備士が10年使う定番。歯飛びの心配がないピン式 | ▼詳しく |
| アストロ 2t ゴムパッド付 | ピン式 | 2t(2脚) | 受け皿にゴムパッドで滑りにくい。コスパ良好 | ▼詳しく |
| BAL 925 ローダウン車用 | ピン式 | 2t(2脚) | 車高の低い車でもかけられる低床タイプ | ▼詳しく |
| BAL アダプタープラス No.1390 | 受け皿アダプター | — | BALに足す滑り止め(923/924/925対応) | ▼詳しく |
| アストロ 輪止め TS417 | 車輪止め | — | パーキングブレーキの効かない分を物理的に止める | ▼詳しく |
| アストロ カーランプ PR557 | スロープ | — | 低い車のジャッキアップポイントに隙間を作る補助 | ▼詳しく |
ウマの選び方|整備士が外さない5つの軸
① 耐荷重は「軸重」と“2脚使用時”の表示で選ぶ
ここは間違えると本当に危ないので、丁寧にいきます。
まず知ってほしいのが、耐荷重の表示には「1脚あたり」と「2脚使用時(2脚の合計)」の2種類があること。
商品ごとに違うので、必ず確認してください。
たとえばBALのウマは「2トン(2脚使用時)」=2脚セットで2トンという意味です。
1脚で2トンではありません。
選び方は、まず車検証を見て、前か後ろの重い方の軸重を確認します。
それより大きい耐荷重のウマを選びます。
「2脚使用時◯トン」表示なら、その値が軸重を上回るもの。
耐荷重ギリギリは危険です。
目安は「車全体の重さの1.5倍ほどの耐荷重」。
これは、ジャッキアップ中の荷重の変動や、道具の経年劣化を見込んだ業界の目安で、これくらい余裕があると安心です。
⚠️ 「軸重を2で割った数」で選ぶのはNGです。
たとえばミニバンで、前軸重が約1,130kgだったとします。
2で割って565kgだから…と1トン用を選ぶと、1トン用は「2脚で1トン=1,000kg」なので、軸重1,130kgを支えきれず危険。
この場合は最低でも2トン用、余裕を見て3トン用が正解です。
迷ったら車のサイズで選ぶのが簡単で安全です。
BAL公式の目安:軽〜普通乗用車=2トン用/大型乗用車・ミニバン・SUV=3トン用。
私も少しオーバースペック気味を選びます。
※車検証の軸重は空車状態。
人・荷物を含まない。
荷物を積むなら(貨物車は最大積載量)を足して。
乗用車はそこまで積まないので、オーバースペック気味を選べば安心です。
② ピン式か、ラチェット(歯)式か
高さの固定方式には、穴にピンを差す「ピン式」と、歯で止める「ラチェット式」があります。
🔧 整備士の本音
私はラチェット式は信用していません。
歯が飛ぶのが怖いからです。
気持ちの面でも、穴にピンを通して物理的に固定するピン式のほうが安心できます。
だからウマはずっとピン式を選んでいます。
③ 3本脚 vs 4本脚
4本脚にもメリットはあります。
接地面が広く左右対称で、平らな床ではどっしり安定し、荷重を4点に分散できる。
机が4本脚なのと同じで、だから4本脚も売られています。
ただ弱点もあって、床が少しでも凸凹だと、4本のうち1本が浮いてガタつきやすいんです。
4本を同時にピタッと接地させるのは、意外と難しい。
その点、3本脚は3点で必ず接地するので、多少の凸凹でもガタつきません。
カメラの三脚が3本なのと同じ理屈です。
ガレージの床が完璧に平らとは限らないので、私は3本脚をおすすめします。
向きさえ間違えなければ、扱いやすいですよ。
④ 受け皿は「溝・ゴムパッド付き」を選ぶ
車体と接する受け皿(サドル)は、溝やゴムパッドが付いているものを選んでください。
受け皿が滑ると、そこからバランスが崩れます。
溝付きなら、車体がしっかり噛んで滑りにくくなります。
⑤ 折りたたみ式は避ける
収納に便利な折りたたみ式は、やめておいたほうがいいです。
私も昔、安物の折りたたみ式を使ったとき、かけた瞬間に脚がグラグラして「これは危ない」とすぐ処分しました。
命を預ける道具なので、ここはケチらないでください。
整備士が実際に使っているウマ
参考までに、私が現場と自分の整備で実際に使っているウマを紹介します。
BAL キーパーマン 923(2t)|10年使って壊れない本命
私が整備学校のころからずっと使っているのがこれです。
10年以上使っても壊れません。
2tのピン式で、DIY初心者が最初の1セットに選ぶなら、これで間違いないです。
ただ、BALのウマは標準で受け皿の溝(パッド)が付いていません。
滑り止めに、別売の「ジャッキアップ用アダプター(No.1390・923/924/925対応)」を一緒に用意するのがおすすめです。
アストロ 2t リジッドラック(ゴムパッド付)|もう一つの定番
BALと並ぶ定番がアストロです。
受け皿にゴムパッドが付いていて滑りにくく、価格も手ごろ。
「BALかアストロか」で迷ったら、どちらを選んでも後悔しません。
BAL 925 ローダウン車用|車高が低い車に
車高が低くて普通のウマが入らない車には、低床タイプを。
私もローダウン用に1セット持っています。
🔧 整備士の本音
私はウマを3セット持っていて、上げる量で使い分けています。
重整備や、上げ下げを繰り返す作業は2柱リフト。
ちょっと上げて整備したいだけなら、ジャッキとウマ。
リフトにわざわざ入れてパッド合わせをする時間を考えたら、ジャッキとウマのほうが早いことも多いんです。
とはいえ、自宅に2柱リフトがあるのは、正直かなり特殊な環境です。
普通のDIYでは、2柱リフトは必要ありません。
ほとんどの人は、ジャッキとウマがあれば十分に整備できます。
ウマの安全な使い方|これだけは守る
① 平坦なコンクリートで・3本脚の「向き」に注意
まず大前提として、平坦で固いコンクリートの上で使ってください。
小石や陥没がないかも確認します。
3本脚のウマは「向き」も大事です。
これはメーカーの説明書には書いていない、整備士ならではのコツです。
🔧 整備士の本音
ウマの“2本脚側”は不安定です。
実際に倒してみると、踏ん張る力がなく、外へコテンと倒れてしまいます。
3本脚でも、左右で向きを同じにして、2本脚側がすべて同じ方向(右や左)を向いていると、車体は簡単に倒れます。
だから、すべてのウマの“1本脚側”を外へ向けるのが正解です。
外側が1本脚なら、押されてもそこでしっかり踏ん張ってくれます。

② ジャッキアップは「前→後ろ」の順番で
4輪を上げるときは、フロントから先に上げるのが基本です。
これにはちゃんと理由があります。
車を止めている力は2つあります。
パーキングブレーキは後輪だけ、ギア(ATのP・MTのギア)は駆動輪だけに効きます。
FF車(前輪駆動)なら、後ろから上げても前輪がギアで止まります。
でもFR車(後輪駆動)は、後ろを上げた瞬間にパーキングブレーキもギアも効かなくなり、前輪が自由に転がってしまう。
「後ろから」は、車によっては危ないんです。
その点、前から上げれば、どんな車でも後輪のパーキングブレーキが残るので安心です。
FFかFRかを迷わなくていい、確実な順番なんです。
そして、順番そのものより大事なのが、次の「輪止め」です。
③ 輪止めは「必ず」使う
「パーキングブレーキをかけているから大丈夫」と思っていませんか。
これが落とし穴です。
🔧 整備士の本音
パーキングブレーキは後輪だけ、前輪はフリーです。
だから、輪止めをしないと、何かの拍子に車が動いて、ジャッキやウマから滑り落ちることがあります。
これが一番こわい。
パーキングブレーキやギア(P)は“補助”でしかありません。
本命の歯止めは輪止めです。
ウマを買うときは、輪止めも一緒に買うのを忘れずに。
かけ方にもコツがあります。輪止めは、接地している一つのタイヤの「前」と「後ろ」の両方に、挟むようにかけてください。
というのも、フロアジャッキは車を上げるとき、アームが弧を描いて動きます。
ジャッキのキャスター(足)の動き方によっては、このとき車がジャッキ側へ引っ張られることがあるんです。
だから、接地している両輪の「後ろ」だけに輪止めをしても、動こうとする車は止めきれず、意味がありません。
一つのタイヤを前後で挟めば、前にも後ろにも動かなくなります。

④ かけた後の「接地確認」
ウマをかけたら、すぐ作業に入らず、必ず確認します。
車体を揺すって確かめるのは禁物です。
崩れたら大事故になります。
整備士はこうします。
- 目視:3本の脚がすべて、しっかり地面に接地しているかを目で確認する
- 音で確認:ハンマーで3本の脚を軽く叩き、甲高い澄んだ音が鳴るか確認する。鈍い音の脚は、きちんと接地していないサインです
🔧 整備士の本音
正直に言うと、私はウマをかけても絶対に信用しません。
何かの拍子に倒れたり壊れたりするかもしれないからです。
だから必ず、ボディの下にタイヤを入れておきます。
万一車が落ちても、タイヤがあれば体がつぶれる空間を作らせない。
これは長年の習慣です。
初心者がやりがちな失敗(現場で見たもの)
最後に、現場でよく見る「危ない事例」を共有します。
同じ失敗をしないでください。
・かける位置を間違えてボディを凹ます:これは本当によく見ます。
ジャッキアップポイントを外して、サイドシル(車の横の下端)の「耳」が潰れている車が多いんです。
🔧 整備士の本音
実は私の愛車も、中古で買ったら4か所とも潰れてぐしゃぐしゃでした。
周りのボディまで凹んでいた。
前のオーナーがジャッキアップポイントを間違えていたんですね。
だからジャッキアップポイントの確認は、本当に大事です。
それと、自宅の駐車場には水はけ用の傾斜(水切り勾配)があります。
そこで前後にウマをかけてジャッキアップすると、車が斜めになった状態でかかってしまう。
いつかウマが倒れるか、車がずり落ちます。
「平らな場所」は本当に大事なんです。
・1基だけで作業する/ジャッキを完全に抜く:ウマ1基では危険です。
左右を同時に支える「2基」が最低ライン。
片側だけだと、もう片方が落ちて車が傾き、最悪は倒れます。
そして念のため、ジャッキも完全には抜かず、軽く添えておくと二重の保険になります。
・砂利など不整地で使う:脚がめり込んで傾きます。
土の上などは避けてください。
・夏のアスファルトで使う:見落としがちですが、夏のアスファルトも危険です。
熱で柔らかくなって、ウマの足がめり込みます。
アスファルトの上で使うなら、ウマの下に合板(コンパネ)などの板を敷くのがおすすめです。
車高が低い車(ローダウン車)はどうする?
車高が低いと、そもそもジャッキの先が入りません。
そんなときは、カースロープに少し乗り上げて隙間を作ってから、ジャッキを入れます。
ウマは前述の低床タイプ(BAL 925など)を使います。
タイヤ交換まで自分でやるなら、最後の仕上げも忘れずに👉 タイヤ交換後の増し締めは必須|整備士が見た脱輪事故と正しいやり方
まとめ|知れば、DIY整備はちゃんと安全にできる
ウマは「命を預ける道具」です。
だからこそ、選び方と使い方を知っておけば、こわがる必要はありません。
- DIY初心者はBALかアストロのピン式2t+輪止めで間違いない
- 折りたたみ式・ラチェット式は避ける。受け皿は溝・ゴムパッド付き
- 平坦な場所で、フロントから上げ、輪止め必須、設置後は目視+ハンマーで接地確認
- ウマを信用しきらず、保険にタイヤを下へ
ちなみにアストロプロダクツなら、リジッドラックから輪止め・スロープまで一式そろえられます。
まとめて買いたい人には便利です。
ウマとセットで使うジャッキ選びは、こちらで詳しく解説しています。
あわせてどうぞ。
👉 油圧フロアジャッキおすすめ3選|DIY初心者向け 現役整備士が比較・選び方を解説
よくある質問
Q1. ウマは何基そろえればいい?
最低でも2基、できれば4基(2セット)あると、4輪を上げる作業まで安全にできます。
輪止めも忘れずに。
Q2. ジャッキだけで、ほんの少しの作業ならいい?
いいえ。
“少しだけ”が一番事故が多いです。
車の下に体を入れるなら、短時間でも必ずウマをかけてください。
Q3. 安い折りたたみ式ではダメですか?
おすすめしません。
脚がグラつきやすく、命に関わります。
BAL・アストロの据え置き型を選んでください。
Q4. 耐荷重はどれを選べば?
普通車なら2t(2脚)で足りることが多いですが、重い車や高く上げるなら3tが安心です。
迷ったら大きめを。
Q5. ウマをかける場所がわからない
車種ごとに決まった「ジャッキアップポイント」があります。
取扱説明書やサービスマニュアルで必ず確認してください。
適当な場所にかけるとボディが潰れます。

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